真夏のホラー

京極夏彦さんの「旧怪談(ふるいかいだん)」。

暑い夏に読みたくなる、背筋がゾクッとするような怪しい話や奇妙な話が集められた小説です。

江戸時代に根岸鎮衛(ねぎしやすもり)という人が集めた面白い話、奇妙な話、噂話、迷信、事件などを「耳嚢(みみぶくろ)」という随筆のような文書にまとめ、さらにそれを京極さんが現代人に読みやすいよう書き直してくれたのが、この「旧怪談」です。

根岸鎮衛は社会的地位が高く、交友関係の幅広い好奇心旺盛な人だったそうな。

そんな根岸さんが友人、知人から集めた変わった話の数々は、想像していた以上に面白くて引き込まれました。

二百年前の風情が「怪談」というジャンルにしっくりきます。

現代を生きる私にでも、情景を繊細に想像しながらスラスラ読める文章でした。

分かりやすく書かれた文、情景を現すための必要な間。区切り。

字の大きさや行の間隔も読みやすかったです。

ひとつひとつの物語が短いところもいい。

物語ごとの最後に原文がついているのですが、京極さんバージョンを読んでから原文を読むのでさらっと読むことができます。

風情の後押し、という感じで良かったです。

 

タイトルも面白く、例えば「うずくまる」「どすん」「誰が作った」「ただいま」「気のせい」「さわるな」などなど。

タイトルでまず、どんな話だろうかと想像してから読むとまったく違っていたり。

楽しみ方も色々です。

タイトルからして怖そうなものは、明るい時間に読むなどかなり構えて読みました。

 

普段はホラー小説をほとんど読まないけれど(怖い話やテレビは割と好き)、この本は毎年夏に読もうかと思うくらい好きになりました。

江戸時代の話だからか、なんとも言えない風情が常に漂っています。

怪談ですが言葉や情景が素敵で。

例えるならば、エアコンではなく風鈴の音で風を知るような。

物の音、人の声、家屋、朝昼晩。

そういう物語の景色を作る要因のすべてにオシャレな間を感じました。

「ギャー!!!」とか絶叫しながら読む本ではなく、一人で静かにぶわっと鳥肌を立てながら読む本だと思います。

こんな怪談、待ってました。

 

「今の、なんだったの…」というような、分からない怖さも味。

テーマは男女の愛憎や親子愛、動物、物の怨念、色々です。

男性、女性、子供、老人。立場も役職も色々。江戸の街が目に浮かびます。

怪事件に繋がる背景や人の性格、行動にも魅力があり最後まで面白く読めました。

怪談なのに面白いなんて。

 

ちょっと怖い話、不思議な話、覗き見してみませんか。

 

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